©Warner Classics - Erato-Ph. Marco Borggreve
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確実にクラシック・ギターの巨匠への道を歩むティボー・ガルシア
30歳の誕生日前日5月25日、
アランフェス協奏曲日本デビュー!
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2024年日本ツアー公演プログラム
曲目
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PROFILE
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ティボー・ガルシア:ギター
Thibaut Garcia: Guitar
最も権威あるGFA国際コンクールを始め
21歳まで各地の国際ギター・コンクールを6度受け、すべて優勝!
■GFA国際コンクール:2015年アメリカ・オクラホマシティ
■ホセ・トーマス国際コンクール:2014年スペイン
■セビリア国際コンクール:2013年スペイン
■テラ・シクロラム国際コンクール:2013年ルーマニア
■アナ・アマリア国際コンクール:2011年ドイツ・ワイマール
■ヴァンジャ・デ・エゲス国際コンクール:2008年スペイン
スペイン系フランスのギタリスト、ティボー・ガルシアは1994年トゥールーズ生まれ、7歳でギターを学び始める。若干16歳でパリ国立高等音楽院に入学を許可される。世界的に著名なギターフェスティヴァルに数多く招待され、またウィーンのコンツェルトハウス、アムステルダムのコンセルトヘボウ、モスクワのチャイコフスキー・ホール、オルセー美術館のオーディトリアム等で演奏。2016年トゥールーズ・キャピトル国立管との協演でコンチェルト・デビュー、この後BBC響等と協演。2017年、イギリスのBBCニュージェネレーション・アーティストに指名され、2018年10月にロンドンのウィグモアホールにデビュー。室内楽では、エドガー・モロー、ジャン・フレデリック・ヌーブルジェ等と共演、またカウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーとも共演&録音を行う。ワーナー・クラシック/エラートと録音の専属契約を結び、「レイエンダ」(2016年)、「Bach Inspirations / バッハに捧げる」(2018年)、「Aranjuez / アランフェス」(2020年)、ジャルスキーとの「À sa guitare/ギターに寄す」(2021年10月)をリリース。最新アルバムは、バリオスのギター作品集「エル・ボヘミオ」(2023年9月)。2019年11月公開の映画「マチネの終わりに」(福山雅治&石田ゆり子ダブル主演、原作:平野啓一郎)に、天才ギタリスト役で登場した。
ティボー・ガルシア関連リンク
オフィシャル・サイト :http://www.thibautgarcia-guitarist.com/
WARNER MUSIC JAPAN :https://wmg.jp/thibautgarcia/
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ESSAY
■ エッセイ
ティボー・ガルシア、高崎でアランフェス協奏曲をひく
山崎浩太郎(演奏史譚)
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5月25日に群馬県の高崎市へ出かけた。
高崎は「パスタのまち」として知られるが、5年前に開場した高崎芸術劇場も、新たな名物となっている。ガラス張りの明るいホワイエを持つ素敵なホールで、高崎駅から歩いて5分という近さもありがたい。
ここで、群馬交響楽団の第598回定期演奏会を聴く。指揮はいま大活躍の俊英、原田慶太楼。「日本とスペイン」をテーマに、山本菜摘の新作「UTAGE~宴~」世界初演と芥川也寸志の名作「交響曲第1番」のあいだに、スペインのロドリーゴの「アランフェス協奏曲」と、ファリャの「バレエ音楽《恋は魔術師》」を取りあげる。東京でもなかなか聴けない、多彩で面白いプログラムだ。
しかしなんといっても、ティボー・ガルシアが「アランフェス協奏曲」のソロをひくというのが、最大のポイントだった。
ガルシアがひくこの曲の素晴らしさは、愛聴するCD(嬉しいことに国内盤はSACDハイブリッドだ)で、すでによく知っている。
いつか実演を聴きたいと思っていたら、日本では初めてのオーケストラとの共演となる群響のこの演奏会で、ようやく実現した。ところが、今回この曲を演奏するのは、高崎での1回きりだという。そこで群馬に行くことにしたのだ。
迎えた本番、青いジャケットに身を包んだ細身のガルシアが舞台に現れた。指揮者の左脇に座る。2000人収容の大ホールなので、ギターにはPAがつく。演奏開始。敏捷で生気に富んだ、ギターのリズムと響きが心地よい。管楽器たちが鳥の声のように歌い、ギターと呼応する。この第1楽章は、森の木洩れ日と鳥のさえずりに満ちた、すがすがしい朝の音楽なのだなと、このとき初めて感じた。
第2楽章。慎重な調弦をへて、ギターが響く。コーラングレが哀愁にみちた、しかしシエスタのように気だるい、あまりにも有名なメロディを歌う。ガルシアのギターは、光にきらめく水滴のように、多彩に色を変える。そのみずみずしさ。ギターの長いカデンツァでは、満場の聴衆が水を打ったように静かに、耳をこらす。集中と緊張を解きはなつように、ほとんど間をあけずに第3楽章に入り、羽毛のように軽やかに、生を楽しむかのようにギターがひらめく。ほほえむようにふわりと着地して、曲が終わる。
そのあと、喝采のなかでガルシアがカーテンコールに登場すると、オーケストラが「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」を演奏して、にこやかに迎えた。翌日の26日がガルシア30歳の誕生日なので、一日早いお祝いだ。お客さんも手拍子で演奏に参加する。
嬉しそうに笑ったガルシア、アンコールに演奏したのは、まずタンゴおなじみの名曲「ラ・クンパルシータ」。得意のナンバーで、タンゴのステップや旋回が目に見えるようなリズムのキレが鮮やか。客席を沸かせたあと、さらにもう1曲のサービス。マラン・マレーの「人間の声」。こちらは昨年6月の来日公演のアンコールでも披露した作品で、一転してしっとりと、静かに聴きいらせる。濡れたようなトレモロが美しい。
ホワイエのCD売場では、たくさんのお客さんが「アランフェス協奏曲」をはじめとして、ガルシアのアルバムを手にとっており、公演後にはサイン会も行なわれた。こうしたコンサートは、ギター愛好者以外にもこの傑出したギタリストの存在が知られていく、よいきっかけになる。
近い将来、日本中にその名声が広まっていくことを!
■ エッセイ
ギター音楽の“シン・時代”を拓く超新星、ティボー・ガルシア
宮林 淳(“日本一ギターのコンサートを聴いている”音楽ライター)
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この5月末、ティボー・ガルシアが2019年、2023年に続く待望3度目の来日を果たす。今回は東京(5月30日)と滋賀(6月2日)でのソロ公演に加え、高崎(5月25日)での群馬交響楽団第598回定演(指揮・原田慶太楼)で「アランフェス協奏曲」を協演する。
ギターのコンサート通いを始めてから40年余年、ここ数年は年間100回近くを聴いている筆者にとってもティボーは特別なギタリストだ。正確無比なテクニック、通常とは逆に指の小指側(右側)で弾弦する“プレスティ奏法”(※1)により、流行の“ダブルトップ構造”(※2)などのギターとは一線を画すスペインの伝統的な名器パウリーノ・ベルナベから繰り出される多彩な美音、柔軟で高度な音楽性など全てが超一級品!その完成度の高さも弱冠30歳とは思えない素晴らしさで、まさにギター音楽の“シン・時代”を拓く正統派の超新星である。
※1 フランスの天才女性ギタリストだったイダ・プレスティ(1924~67)に由来する奏法
※2 従来の一枚板の表面板ではなく、薄い2枚の表面版の間にハニカム状の樹脂を挟み込んだ新構造のギター。大音量とピアノ的に均質化した音色が特徴で、最近は徐々に使用者が増えている。
さてティボーはいかにもフランス人らしく、コンサートのプログラムを「一流のシェフがお客に提供するフルコースディナーのようなもの」に例えているが、今回のソロ公演も多彩なメニューとなっている。
前半はパラグアイの伝説的ギタリスト兼作曲家、アグスティン・バリオス=マンゴレ(1885~1944)の作品からの6曲。ティボーは“ギターのショパン”にも例えられるバリオスを過去2回の来日公演でも取り上げ、その作品集たる最新CD「エル・ポエミオ」(音楽之友社のムック<レコード芸術2023年総集編>の「2023年後半のおすすめディスク・器楽曲」で“推しディスク”として絶賛されている名盤)を出すほど傾倒している。
後半はまず、古典期イタリアのギターとヴァイオリンの2大ヴィルトゥオーゾ、ジュリアーニとパガニーニの作品(パガニーニは実はギターの名手でもあり、音楽史上で唯一の“ヴァイオリンとギターの二刀流”だった!)。そして超絶技巧ギターデュオのアサド兄弟の兄で作曲家でもあるセルジオ・アサド(1952~)による、日本映画「夏の庭」の音楽22曲中の哀感漂う1曲「別れ」。最後は、1980年代半ばに指の故障で演奏活動を断念した後は作曲と指揮に専念しているギター界の長老レオ・ブローウェル(1939~)が、アフリカの民話から霊感を得たという3楽章の組曲「黒いデカメロン」という名作揃いのラインナップ。
そして群響との「アランフェス協奏曲」だが、ティボーがこのロドリーゴの名曲をトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団と共演したCDは、音楽之友社のムック<新時代の名曲名盤500+100>のこの曲の項で断トツの1位に選ばれているだけに、今回の協演も楽しみだ。
音楽ファンの皆さまにはぜひコンサート会場に足を運ばれて、“名シェフ”ティボーによる“絶品メニュー”の数々をご堪能いただきたい!